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入澤 啓太; 目黒 義弘
no journal, ,
原子力機構には再処理工程から発生した低レベル及び極低レベル放射性廃液を固化したアスファルト固化体(以下、固化体と略す)が約3万本保管されている。大半の固化体の組成は55wt.%のアスファルトと45wt.%の塩(硝酸塩,亜硝酸塩,リン酸塩,炭酸塩等)であるが、廃液処理のキャンペーンに依存して塩組成や塩含有率が異なる固化体も一部、存在している。この固化体を処分する際には、塩含有率が異なる固化体から発生する放射線分解Hガス量を評価することが重要である。そこで本研究では、塩含有率が異なる模擬固化体を作製し、線照射時における吸収線量及び線量率がHガス発生量に及ぼす影響を各模擬固化体ごとに調べた。
佐藤 淳也; 中山 卓也; 川戸 喜実; 目黒 義弘
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福島原子力発電所における汚染水処理設備から発生した放射性スラッジは硫酸バリウム,フェロシアン化ニッケル,水酸化鉄が主成分であり、加えて多量の放射性核種を含有している。そのため、処分のためにスラッジを固型化した固化体への放射線影響が懸念されている。本試験では4種類の無機固型化材を用いた模擬スラッジ固化体について線照射を行い、水素発生のG値を算出するとともに、シアンガスの発生挙動を調べた。結果、セメント系固型化材においては、先行研究の結果とよく一致し、固化体中の自由水量がG値を決定する上で重要な因子の一つであることが示唆された。また他固型化材との比較では、自由水量とG値に一貫性が見られず、固型化材の種類も水素ガス発生に影響を与えている可能性が示唆された。一方、シアンガスはいずれの試料も検出下限値以下であった。
上松 敬; 花屋 博秋; 山縣 諒平; 清藤 一; 長尾 悠人; 金子 広久; 山口 敏行*; 川島 郁男*; 八木 紀彦*; 高木 雅英*; et al.
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電子・線照射施設はほぼ順調に照射を実施した。平成25年度における運転時間は、電子加速器では1,242時間、コバルト第1棟では18,900時間、コバルト第2棟では11,804時間、食品棟では6,587時間であった。東京電力福島第一原子力発電所の事故に対する復興対応関連課題については、電子加速器では47回、線照射施設で91回の利用があった。主要なメンテナンスは次の通りである。電子加速器ではSFガス回収装置の更新、食品棟では定期整備、コバルト第1棟及び第2棟では線源の補充をそれぞれ行った。また、コバルト施設の定期整備期間に線源保管プールから排出した水を一時貯留し再利用するために、容量600mの貯水タンクをコバルト1棟横に設置した。
中山 卓也; 花田 圭司; 鈴木 眞司; 川戸 喜実; 目黒 義弘
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原子力機構で発生した可燃物,難燃物の放射性廃棄物は焼却処理し、セメント固化体として廃棄体化することが検討されている。セメント固化体は内包する水の放射線分解により水素ガスが発生するおそれがある。廃棄体の健全性を評価するため、焼却灰の充填率,水セメント比,吸収線量率,吸収線量をパラメータとし、Coを線源とする線照射を行い、焼却灰セメント固化体から発生する水素のG値の算出を試みた。固化体中の自由水量が多くなるにつれ水素ガス発生量は多くなる傾向を示した。一方、自由水に対するG値は自由水量が多くなるにつれ、G値が小さくなる傾向が見られた。
三浦 健太*; 加田 渉*; 猿谷 良太*; 花泉 修*; 石井 保行; 江夏 昌志; 横山 彰人; 佐藤 隆博; 神谷 富裕
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ビーム技術開発課では、これまでにPBW (Proton Beam Writing)技術を用いて、シリコン基板上のPMMA (poly-methyl-methacrylate)にマッハツェンダー型光導波路及びこれに熱電極を付加した光スイッチを製作し、低消費電力(43.9mW)での光スイッチ動作を実現した。しかし、導波路外への光リークが多く、信号対雑音比が数dB程度と小さいため、光スイッチとしての性能が不十分であった。本研究では、光学特性の優れたPDMS(poly-dimethyl-siloxane)を材料とし、この薄膜内にマッハツェンダー(MZ)形状を埋め込んだ光導波路を製作した。先ず、PDMSの基材及び架橋剤を10:1で混合して、スピンコートによりシリコン基板上に厚さ30m程度を成膜した。この試料に、TIARAの軽イオンマイクロビームラインで形成したHマイクロビーム(750keV、径1m)を用いて、スキャナーによる走査と照射チャンバー内に設置した真空ステージによる試料移動との組み合わせにより、40mm20mmの範囲にコア径8mのMZ形状光導波路を描画した。光導波路の評価のため、ファイバーレーザーを用いて、光導波路の片側に中心波長=1.55mの光を導入し、反対側でその透過光像を観察した。この結果、100nC/mm程度のフルエンスで描画した光導波路では、漏れ光によるにじみのほとんどない単一のスポットが観測でき、PMMAを用いた場合よりも光伝播特性が良いことが分かった。
須郷 由美; 佐々木 一郎; 渡辺 茂樹; 大島 康宏; 石岡 典子
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ヒトの必須微量元素のひとつでもある銅の放射性同位体のうちCuは、半減期が12.7時間と比較的長く、医療用小型サイクロトロンでも製造可能なポジトロン放出核種であることから、PETイメージング薬剤への利用が大いに期待されている。本研究では、HER2(ヒト上皮成長因子受容体2)が過剰発現したがんのPETイメージングに有用な新規Cu標識分子プローブの開発を目的として、HER2親和性ペプチドの誘導体にCuを標識した化合物の合成実験を行った結果、目的とするCu-DOTA-MARSGLペプチドを高収率で得ることができた。また、安定性について検証した結果、生理食塩水中で安定であることがわかった。
津田 修一; 佐藤 達彦; 小川 達彦
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イオンビームに対する生物効果を実験的に評価する上で、入射ビームの飛跡およびその近傍における詳細なエネルギー付与分布データはビームによる線量寄与を理解する上で重要である。これまでに機構で開発したエネルギー付与分布計算モデルの精度向上を目的とした検証を行うため、壁なし型の組織等価比例計数管を用いて、イオンビームの飛跡沿いに生成される高エネルギー電子(線)を含む線エネルギー(y)分布を様々なエネルギーのイオン種に対して系統的に取得してきた。その後、より詳細に入射イオンと二次粒子の寄与を検討するために、高崎量子応用研究所のTIARAでペンシル状の30MeV陽子ビームに対して、入射イオンと線等の事象を弁別して測定した。本発表では、実験で取得した径方向のy分布およびRadilal dose分布等のデータとともに、PHITSを用いた計算結果および陽子ビームによる線量寄与について検討した結果を報告する。
丹野 敬嗣; 大塚 智史; 矢野 康英; 皆藤 威二; 大久保 成彰
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原子力機構では、高速炉燃料被覆管の候補材料として9Crおよび11Cr酸化物分散強化型(ODS)鋼の開発を進めている。燃料被覆管は最高で250dpaの中性子照射に晒されることから、高照射下での酸化物分散粒子の安定性等を評価する必要がある。そこで、本研究では、ODS鋼の低温(400C)照射による照射硬化挙動、および高温(700C)でのナノサイズの酸化物分散粒子の安定性に着目した照射挙動を評価するために、高照射量のデータを短期間で取得する目的でTIARAによるイオン照射試験を実施した。試験に供した材料は、完全プレアロイ法で作製した9Cr-ODS鋼と11Cr-ODS鋼であり、400Cと700Cでそれぞれ120、80dpaの損傷をFeイオンにより導入した。400C照射では両鋼とも照射硬化が認められたが、Cr濃度の違いにより照射硬化挙動は大きく変わらないことがわかった。700C照射では両鋼とも顕著な照射軟化が見られなかったことから、酸化物分散粒子は高温照射環境下でも安定であると考えられる。今後、照射を継続するとともに、微細組織調査による酸化物粒子の分散状態についても評価を実施する。
山下 真一郎; 山県 一郎; 皆藤 威二; 関尾 佳弘; 井岡 郁夫; 井上 利彦
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高Ni鋼は、良好な耐スエリング特性を有していることから燃料被覆管材料として開発されている一方、照射や高温熱時効に伴う延性の低下が課題である。照射実績を有するNimonic PE16では'(Ni(Ti, Al))析出物の粗大化や粒界での再析出が延性低下の要因の一つとされている。これら課題を克服するため、原子力機構(JAEA)ではNimonic PE16で利用している'析出型とは異なる炭窒化物析出型の高Ni鋼(15Cr-35Ni鋼)と、'よりも安定と考えられる"(NiNb)を加えた'/"析出型の高Ni鋼(15Cr-43Ni鋼)の2鋼種を新たに開発し、特性評価を進めている。本研究では、耐スエリング特性や照射下での微細組織安定性の評価を目的として、系統的な条件での照射試験が可能なJAEA高崎量子応用研究所イオン照射研究施設(TIARA)にてイオン照射を行った。平成24年度までに照射温度550, 600C、照射量100dpa及び照射温度700C、照射量250dpaの照射データを取得しており、平成25年度には照射温度依存性の確認等を目的として試験データの拡充を行った。その結果、比較材であるPNC316よりも耐スエリング特性に優れ、スエリングピーク温度はNi添加量に影響を受けず600Cであることを確認した。
山田 圭介; 齋藤 勇一; 石井 保行; 的場 史朗; 千葉 敦也; 横山 彰人; 薄井 絢; 佐藤 隆博; 大久保 猛; 宇野 定則
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TIARA静電加速器において平成25年度に行った技術開発の成果を報告する。タンデム加速器では、クラスターイオン電流増強のため、荷電変換ガス(He)の圧力に対するCイオンの透過率を測定した。その結果、透過率はCで2.6%、Cで1.4%であった。また、最大の透過率が得られる圧力は、他の炭素クラスター(Cn:n=2-10)と比べ低い値であることが分かった。荷電変換ガス圧力を最適な値に調整することで、ターゲット位置で数十pAのCイオンビームが輸送可能になった。シングルエンド加速器では、マイクロPIXE分析に用いられるHビームの時間に依存したエネルギーシフト量を測定するため、Al(p,)Siの共鳴核反応を用いたビームエネルギー測定を行っており、軽イオンマイクロビームラインでの測定系の構築及び動作試験を完了した。イオン注入装置では、クラスターイオン電流測定用ファラデーカップ(FC)の構造を検討するため、アスペクト比の異なるFCで100keV及び540keVのCイオン電流を測定し比較した。その結果、アスペクト比10, 15, 20のFCで測定値がほぼ一定となることから、本エネルギーではアスペクト比10以上が必要であることが分かった。
宮下 敦巳; 山本 春也; 吉川 正人
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水素化社会の実現のため、水素を有機水素化合物(OHC)の形で貯蔵・運搬する技術に注目が集まっている。有機水素化合物検知材料(OHC-M)を用いて光学的にOHCを検知するには、OHCから水素を脱離させる反応を進行させるため、OHC-Mの加熱が必要となる。本研究では、検知光と赤外線レーザ光を導入できる小型の吸光度測定装置を試作することにより、ヒータ等の電源設備を用いることなくOHC-Mを光加熱する手法の可能性を調べた。その結果、波長1070nm、出力18.0WのYb赤外光ファイバレーザによる予備実験では、OHC-Mの温度を10分程度で150Cにまで加熱できることが分かった。またOHC-Mの試料台を熱容量の小さなセラミックスで作製した場合、瞬時に150Cまで温度を上昇できることが分かった。膜厚1158nmの3酸化タングステン()薄膜にPtを14.4nm蒸着したOHC-Mを加熱した後、流量200ml/minの1.0%シクロヘキサンを接触させた時の透過光強度の時間経過を調べると、単純な指数関数的減少では無く、減衰時定数の異なる2つの成分を有する減少であることが分かった。今後、OHC-Mの特性評価を進めると共に、異なる2つの成分の物理的要因の解明を目指す予定である。
西川 宏之*; 佐野 遼*; 内田 諭*; 喜多村 茜; 石井 保行; 神谷 富裕
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これまでに集束陽子線描画(proton beam writing, PBW)によりシリコン基板上に高アスペクト比の誘電体ピラー構造を有する三次元誘電泳動デバイスを開発し、大腸菌などの捕集効果が高いことを実証した。本研究では、工業利用に不可欠な柔構造化及び更なる捕集効果の向上を目的として、酸化インジウムスズ(ITO)電極付きPETフィルムを用いた誘電泳動デバイスを以下の2ステップで製作した。ITO電極付きPETフィルム上にポジ型感光性樹脂を成膜し、電極形状のマスクを付けて紫外線を露光した後、露光部分以外をエッチングしてPETフィルム上に誘電泳動用の電極を製作した。この製作した電極付きPETフィルムにネガ型レジスト(SU-8)を15-100m厚で成膜し、PBW装置で径2mのドットを間隔7mと20mで、1010列描画した後、熱処理と現像をして高さ15mのピラー構造を製作した。捕集効果は、菌を模擬したリポソームの捕集量を実測して評価した。この結果、従来構造の20m間隔のピラーに対して、7m間隔のそれでは捕集効果が約6倍高くなった。これはピラー間を狭くしたことにより、このピラー間の電場が強くなったためと考えられる。このようにPETフィルムを基板とすることで柔構造を有し、更に従来のものよりも高い捕集効果を持つ誘電泳動デバイスを開発した。
端 邦樹; 塙 悟史; 本岡 隆文; 塚田 隆
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海水の放射線分解生成物の発生における塩素イオン,臭素イオン等の海水成分影響を調べるため、線照射実験を実施した。照射実験には高崎量子応用研究所の線照射施設を使用し、大気下で閉栓したバイアル瓶中の試料溶液を3.4kGy/hで照射した。照射後に過酸化水素量はヨウ素を酸化することによる溶液の色の変化から見積もった。実験条件を模擬したラジオリシス計算もあわせて実施した。実験と計算の比較から、海水の放射線分解では塩化物イオン,臭化物イオン,重炭酸イオン等のイオンが主な役割を担っていることが示された。また、過酸化水素の発生に対しては塩化物イオンの寄与が大きく、水素分子の生成に対しては臭化物イオンの寄与が大きいことが示唆された。
櫻井 映子*; 櫻井 栄一*; 石井 慶造*; 小塩 成基*; 伊藤 駿*; 松山 成男*; 江夏 昌志; 山田 尚人; 喜多村 茜; 佐藤 隆博; et al.
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本研究は、ニコチン等の有害な化学物質の摂取を抑制する血液関門細胞の機能について、マウスの系統差を明らかにすることを目的としている。今回は、細胞の増殖能力が異なるICR系統とC57BL/6J系統の3周齢のマウスから肺血液関門細胞を分離し、コラーゲンコートした培養フラスコを使用して、COインキュベーター内で培養した。培養液を緩衝液に置換後、0.022Mのニコチンを一定時間作用させた後凍結乾燥し、微量元素分布をTIARAの大気マイクロPIXE(particle induced X-ray emission)装置で分析した。その結果、細胞の増殖能力が高いC57BL/6Jマウスの肺血液関門細胞では、ニコチン添加量の増加とともにリンの量が16g/cmから2g/cm以下に急激に低下しカルシウムと塩素が増加したが、ICRマウスではそのような変化が見られなかった。このように、マウスの系統による血液関門細胞の機能の違いについて、大気マイクロPIXEを用いて細胞内微量元素の観点から調査可能であることが示された。
笠松 哲光*; 長嶋 友海*; 永井 清絵*; 長嶺 竹明*; 村上 博和*; 江夏 昌志; 山田 尚人; 喜多村 茜; 佐藤 隆博; 横山 彰人; et al.
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血液の難治性悪性疾患である骨髄異形成症候群(MDS)では、骨髄が過形成であるにもかかわらず鉄の利用率が低下し著しい貧血を来たすことがある。しかし、貧血の原因として知られている鉄,銅,亜鉛などの様々な微量元素のMDS赤血球における分布や動態は不明である。本研究では、MDSの病態とMDS赤血球における微量元素分布との関連を調べることを目的とした。最初に、健常人とMDS患者から採取した血液を等量の生理食塩水にて洗浄後、1400rpmで5分間遠心し上清を除去した。次に、0.5m厚のポリカーボネート膜上に滴下後凍結乾燥し、大気micro-PIXE(particle induced X-ray emission)分析を行った。その結果、健常者赤血球とMDS赤血球で鉄と亜鉛の濃度には差がなかったが、MDS赤血球で銅及びマンガンの濃度が有意に低値を示すとともにカルシウム濃度に高い傾向が見られた。また、鉄は健常者赤血球ではドーナツ状に分布している一方、MDS赤血球では全体に均一に分布していた。このように、MDS赤血球の微量元素の分布及び濃度が健常者赤血球とは有意に異なることを明らかにし、これらの異常が、MDS患者の貧血の要因となる可能性を示唆した。
松田 康裕*; 奥山 克史*; 小松 久憲*; 大木 彩子*; 橋本 直樹*; 佐野 英彦*; 山本 洋子*; 岩見 行晃*; 林 美加子*; 能町 正治*; et al.
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本研究では、フッ素による歯の脱灰抑制効果を調べるため、脱灰処理した歯質に充填したフッ化物含有材料からのフッ素の拡散を、マイクロPIGE/PIXEを用いて評価・検討した。試料は以下の3段階の手順で製作した。(1)う蝕のないヒト抜去歯のエナメル質最表層を除去し、頬側の歯冠部エナメル質に窩洞を形成した。(2)これを脱灰溶液中で72時間、37Cで保管して、歯質表面を脱灰処理し、3種類のフッ素含有材料("フジIXエクストラ(GC)" (EX), "フジIX(GC)" (FN), "フジVII(GC)" (VII))をそれぞれに充填し、更に緩衝液中(pH7.5)で24時間、37Cで保管した。(3)この後、歯軸と平行にカットして厚さ約200mの試料を作製した。最表層および窩壁からのフッ素の分布を測定した結果、EX群では他と比較して歯質表層の最も深い領域までフッ素の分布が認められたが、窩洞壁では他と比較してフッ素の拡散が認められなかった。FN群では逆に窩洞壁においてフッ素の拡散が強く認められた。VII群では窩洞壁にのみフッ素の拡散が認められた。これらの結果は、フッ素の拡散に歯質へ直接拡散する経路と溶液に溶出してから歯質へ拡散する経路の2つあることを示しており、フッ素含有材料を使い分けることによって効果的なう蝕予防が可能になると考えられる。
前川 雅樹; Zhou, K.*; Zhang, H.; Li, H.; 河裾 厚男
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ナトリウム線源と固体ネオン減速材により構成される高輝度陽電子ビーム発生装置により形成したスピン偏極低速陽電子ビームを電磁石内に導入し、磁場中にある試料の消滅線の強磁場印加下その場測定が行えるシステムを開発した。ビーム径は1mm以下、ビーム強度110個/s、スピン偏極率は27%であり、磁場は最大1Tを印加可能である。この測定システムを用い、炭化ケイ素(SiC)中の空孔誘起磁性の検出を試みた。炭化ケイ素に2MeV電子線照射を行い空孔を生成し、正負磁場における陽電子消滅パラメータの差分を計測した。3C-SiC(n型)結晶に照射量は1.510e/cmである。現在のところ、1Tの磁場印加下測定において正負磁場で有意な差は見いだせていないが、今後ビームや装置の改良を行い測定精度を上げていく予定である。
小塩 成基*; 伊藤 駿*; 石井 慶造*; 松山 成男*; 寺川 貴樹*; 佐多 大地*; 遠山 翔*; 笠原 和人*; 久保 亮介*; 江夏 昌志; et al.
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本研究では、国内で最も多く消費される農産物であるコメが、セシウム(Cs)を含む土壌で栽培された場合のCsの集積部位を明らかにするために、マイクロPIXE (particle induced X-ray emission)を用いてコメ内部のCsの元素分布測定を行った。また、より高感度にCsの挙動を観察することを目的とし、Csと同族で約5倍の特性X線発生断面積を持つルビジウム(Rb)をCsの代替として用いることを検討した。CsおよびRbを別々に散布した土壌で、14日間および34日間栽培したイネから収穫したコメを試料として用いた。測定の結果、Csは白米部よりも糠や籾殻に多く集積する様子が観察され、栽培期間14日と34日のCsの濃度比は1.53.0で、栽培期間の比(34日間/14日間=2.43)とおよそ合致していることから、1日で取りこむ量が大きく変化しないと仮定すると、イネの生育によって取り込まれたCsを可視化したと考えられる。Rbの集積部位はCsの場合と類似しており、RbがCsの代替として使用可能であることが示唆されたが、感度については連続X線のバックグラウンドのためCsと同等となり向上は図れなかった。
加田 渉*; 三浦 健太*; 花泉 修*; 横山 彰人; 喜多村 茜; 江夏 昌志; 佐藤 隆博; 神谷 富裕
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プロトンマイクロビームを試料に照射することで誘起するionoluminescence (IL)の波長を高分解能で分析することにより、微小領域の化学組成情報が得られる。本研究では、既存のIL検出システムの高感度化を目的に、IL検出光学系とイオンマイクロビームの焦点を一致させた共焦点顕微光学系を開発するとともに、この光学系の反対側の焦点に、直径800mの光ファイバを介して、背面入射冷却CCDの分光器を設置した。その結果、外乱光の遮断によるバックグラウンドの低下により、従来はほとんどILスペクトルが得られなかったAlO:Cr試料から、Crに対応する幅の狭い689nmのピークを精度よく計測することに成功した。
百合 庸介; 湯山 貴裕; 石坂 知久; 清藤 一; 上松 敬; 奥村 進; 石堀 郁夫
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高崎量子応用研究所のサイクロトロンでは、多重極電磁石を用いてイオンビームの横方向強度分布を均一化する技術及びガフクロミックフィルムを用いたビーム強度分布計測技術を開発している。本研究開発では、ビーム利用において照射条件に応じて効率的に均一ビームを形成するビーム輸送系の調整手順を確立した。ビーム光学系設計、粒子トラッキングシミュレーション及びそれらに基づいた検証実験から、ビーム輸送や形状調整に関する電磁石や薄膜散乱体のパラメータを決定した。この結果、10MeVの陽子や413MeV/uのアルゴン等のイオンビームにおいて、100cmを超える広い均一照射野や細長いリボン状の均一ビームが1時間程度の調整時間で形成可能となった。ビーム強度分布の計測では、ガフクロミックフィルムHD-V2及びEBT3を新たに使用するため、コバルト60線照射によりそれらの着色応答の基本的な特性を調べた。その結果に基づいて、HD-V2及びEBT3をイオンビームの強度分布計測へ適用し、それらが大面積均一ビームの特性評価に利用できることを確かめた。